『ベートーヴェン“不滅の恋人”の謎を解く』青木やよひ

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ベートーヴェンというと「苦悩の英雄」というレッテルとともに、眉間にしわがよった、あの顔が思い浮かぶ。確かに“音楽家なのに耳が聞こえなかった”というのは苦悩に違いないが、毎日が苦悩だけで満たされていたはずはない。
 
ベートーヴェンは女性にもてたのだ。相手は自分より上の階級、つまり貴族の女性ばかりである。特筆すべきはこれらの女性側から「実は私はベートーヴェンとつき合っていたことがあるの」という暴露話がただひとつとして漏れ聞こえてこないことだ。男冥利につきる話である。つきあい方(というか、別れ方?)にコツがあったのだろうか。
 
そんな数多い女性の中で誰が本命だったのかを解き明かそうとしたのが本著である。筆者の青木やよひは音楽学者ではないが、ジャーナリストとしての視点と緻密さをもって、当時の状況をひもといていく。推理小説を読むようなスリリングな展開があり、読者を飽きさせない。
 
ベートーヴェンの不滅の恋人が誰であるか、ということに関しては諸説あり、いまだに最終的な回答が出たわけではない。青木が構築する論理には思わずうなずいてしまいそうになるが、これに対する反論も存在する。それでも読んでいておもしろい。新書版という手頃なサイズでもあり、気軽に読める一冊だろう。(講談社現代新書1538)