『仕事にすぐ効く魔法の文房具』土橋正

100823私はステーショナリーが大好きだ。見ているだけでも楽しく、わくわくしてくる。世の中、とりわけ男性諸氏の中には私のような人が多いのではないか、と密かに感じている。ポケットマネーで買えるものが多いのも、うれしさのひとつだろう。
 
大きめの専門店を訪問すると「こんなものがあったのか」という発見が必ずある。「きっと便利だろう、役に立つに違いない」とつい衝動買いしてしまうのが、いつものパターンだ。結果として引き出しの肥やしになってしまう物の方が多いが、「買って良かった」と満足できる品にも出会える。本当に使いやすいかどうかは、使ってみないとわからない。「買わないことには答えが出ない」というのが「とりあえず買ってみようよ」という悪魔のささやきの原因だ。
 
店舗で商品を実際に手にとってあれこれと思案するのは楽しいが、問題がひとつある。展示されているアイテムが多すぎるのだ。たとえば筆記用具。あるいはファイリング用品。種類も多い上に、色やデザインに迷い始めたら収拾がつかなくなる。これだけ商品があふれかえっていると、「これぞの逸品」がその中に埋もれてしまい、気がつかないまま通り過ぎてしまう恐れはおおいにある。
 
そんな逸品や便利な小物を次から次へと紹介してくれるのが本書である。装丁もすっきりしているし、掲載されているカラー写真にもそそられる。何の、どこが、どのように優れているのかが、小気味よく語られていく。「こんなものがあったのか」という驚きと並行して「この製品にはこんな使い方もあったのか」という新発見もたくさんあり、気分が高揚してくる。本の帯にもある「気分もパフォーマンスもUPする! それが文房具の力」というキャッチフレーズに素直に頷いてしまう私だった。
 
これも欲しい、あれも欲しい、となるのは必至だが、あせってはいけない。まずはざっと通読し、その後しばらく頭を冷やすのがよいだろう。カタログショッピングと同じ手順だ。初回に「これが欲しいっ」と感じても、日がたつとともに、その時の興奮は次第に醒めてくるものだ。
 
ステーショナリーの解説を読んでいると、おのずからその人の仕事の進め方や工夫の仕方が見えてくる。これもこの本のメリットだ。より効率的な仕事の進め方や資料の整理方法などに関しては、それにターゲットを絞った書籍が多数出版されているが、本書のような「カタログ的」な本から得られるふとしたアイデアは、読者に何だか思いがけない得をしたような気持ちをもたらしてくれる。
 
自分なりに「こんなものが売られていたのだ」と感動しても、その製品の存在に今まで気がつかなかったのは、自分だけなのかも知れない。あるいは、すでに自分が長らく愛用しているものでも、他の人には「ほぉ」という稀少品なのかも知れない。しかし、本書を読んで「全部知っている、すべて持っている」という人はいないだろう。人それぞれに何か発見があるはずだ。ハード面かソフト面か──それが何であるかは、読んでみてのお楽しみとしておこう。(東京書籍)