『源氏物語』がブームだ。それもそのはず、今年は源氏物語の存在が記録として確認されてからちょうど千年目にあたる。さまざまな場所でこの物語に関する情報が紹介されているが、千年も昔の日本にこのようにたおやかで繊細な文化が栄えて […]
紀伊國屋書評空間
『決定版 ショパンの生涯』バルバラ・スモレンスカ=ジェリンスカ著、関口時正訳
小学生でもその名を知っているショパン。プロからアマチュアまですべての音楽ファンのアイドルだ。 これほどショパンの音楽が日本人に愛される背景には、いくつかの理由が考えられる。まず、あまり幸せではなかったように見えるその人生 […]
『バッハ 演奏法と解釈-ピアニストのためのバッハ』パウル・バドゥーラ=スコダ
「もっと自由なバッハへ──21世紀のバッハ解釈」 今回はあつかましく自らが関わった書籍を紹介することをお許し頂きたい。 バッハの演奏法に関するドイツ語の大著を数年かけて邦訳した。いつ終わるともわからぬ翻訳と編集は長いトン […]
『クラシックでわかる世界史』西原稔
「時代を生きた作曲家 歴史を変えた名曲」 本書のタイトルは「クラシック音楽を利用して世界史を勉強しよう」と読めるが、そうではない。「世界史と対応させることによってクラシック音楽をより深く味わうための本」なのだ。音楽の歴史 […]
『新編 悪魔の辞典』アンブローズ・ビアス
日本人はおしなべて「大人同士の洒落た会話」を楽しむのが下手なようだ。何かの祝賀会のような機会に知らない人と同席しても、そこで会話が盛り上がることはあまり期待できない。 初対面の人との専門外の会話にも気軽に参加し、そこを笑 […]
『ワーキングプア―日本を蝕む病』NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班・編(ポプラ社)/『高学歴ワーキングプア―「フリーター生産工場」としての大学院』水月昭道
ワーキングプア。悲痛な響きだ。最近使われるようになった言葉だが、目いっぱい働いても生活保護の水準にも届かないような収入しか得られず、人生の将来像を描くことがまったくできない人々のことだ。正社員や専任講師のように給与が保証 […]
『音楽でウェルネスを手に入れる』市江雅芳
演奏家として活動するためには、日々の練習が欠かせない。器楽奏者の練習時間は日々数時間というところだろうか。身体そのものが楽器である歌手は、器楽奏者よりもっと短時間で終えるのが一般的だ。私の専門はピアノだが、「何時間も続け […]
『地平線に』前田隆平
某内閣は「戦後レジームからの脱却」というスローガンを掲げ、「原爆投下はしょうがない」という某大臣の発言が徹底的に糾弾されるなど、いまだに第二次世界大戦の記憶が私たちの意識下にくすぶっているのは、紛れもない現実だ。 私自身 […]
『観る─宇宙からの出発─』大野一道
著者の大野は歌手である。円熟の境地にさしかかる50代で、すばらしい声の持ち主だ。もともとは西洋音楽のジャンルからスタートしたものの、そこに自分自身と融合しきれない一種異質なものを感じ、日本語で歌う、日本人としての表現を追 […]
『エリザベート ハプスブルク家最後の皇女』塚本哲也
ソ連が崩壊し、ヨーロッパから共産圏が消滅し、欧州諸国が現在のように連携して通貨まで統一されるなど、誰に想像できただろうか。しかしそこに至るまでのヨーロッパの長い歴史は緊張に満ち、苛酷なものだった。 塚本の語るエリザベート […]