「やっと出たか…」と、思わずため息がでてしまう。それほど役に立つし、楽しい内容の本である。読んで楽しくて、しかも勉強になるという本は、クラシック音楽のジャンルでは圧倒的に少数派だ。書店の本棚を眺めると、役には立つものの、 […]
紀伊國屋書評空間
『「密息」で身体が変わる』中村明一
タイトルからは健康法に関する本が想像されるが、そうではなく、音楽をベースにした文化論が鮮やかに展開される。こうした間口の広さが、本書まず第一の特徴と言えよう。 著者の中村と私とは、中学・高校を通じて“同じ釜の飯を食った” […]
『欧文書体 その背景と使い方』小林章
日常活動にパソコンの存在が欠かせなくなりつつあるのは、音楽家とて同じである。しかし慣れさえすればこんなに便利なものはない。 パソコンの操作が一通りこなせるようになると“カスタマイズの森”に迷い込み、何かとインストールして […]
『バッハとの対話─バッハ研究の最前線』小林義武
前回にひきつづき、もう一冊バッハに関する書籍を紹介したい。生涯における逸話など「バッハの話題」が中心だった礒山の著書とは少し趣を変え、本書は多岐にわたるバッハ研究そのものを中心に紹介したものだ。「バッハに関する話題を考証 […]
『J.S.バッハ』礒山 雅
クラシック音楽における「三大B」と呼ばれる作曲家がいる。バッハ、ベートーヴェン、ブラームスという、いずれも名字がBで始まるドイツ音楽の正統派たちだ。重厚にして堅実な作風は、まさに日本人好みと言えるだろう。 三大Bのトップ […]
『菩提樹はさざめく』三宅幸夫
クラシック音楽には「歌曲」というジャンルがある。シューベルトの《冬の旅》という連作歌曲のタイトルは、ご存じの方も多いだろう。たとえ《冬の旅》は「?」でも、《菩提樹》となると「!」だろうか。《菩提樹》は、実は《冬の旅》に含 […]
『美学への招待』佐々木健一
「美学とは何か」「何をどう扱う学問なのか」「美学を知らなくては藝術は論じられないのか」…。わからないことばかりである。美学の学者なんて、霞を食べて生きている仙人のようなものではないか、と思いたくなる。 私のように音楽を専 […]
『いい音ってなんだろう』村上輝久
「ピアノ調律師」という職業をご存じだろうか。平たく言えば「ピアノの音を合わせてくれる専門家」なのだが、この技術者なしでは世のピアニストは生きていけない。 ピアノは、楽器としてはとても複雑で大がかりな構造にできている。ふつ […]
『ほんとうの社会力』辻 秀一
「ここ一番で力が出せない」という悩みをよく耳にする。職種や年齢には関係ないようだ。当然のごとく、学生たちもぼやいている。私も演奏家である自分の問題として、また指導者の立場からも「どうしたらステージであがることなく、普段の […]
『Aをください』練木繁夫
Aは「エー」ではなく、「アー」と読む。ドイツ語だ。先日この書評ブログに彗星のごとく登場した、世界を股にかけて活躍中のピアニスト、練木繁夫が初めて書き下ろした本である。練木がいかに文才に長けているかは、書評空間にある投稿文 […]