演奏家をめざしつつも、メンタルの問題に悩んでいる人への福音となる本かも知れない。とは言うものの、この本に書かれていることを忠実に守りさえすれば、今抱えている問題への解決が提供されるノウハウ本ではないことは、あらかじめ知っ […]
紀伊國屋書評空間
『ファジル・サイ』ユルゲン・オッテン 畑野小百合訳
今年4月17日の朝刊に掲載された記事である。 「イスラムを侮辱」有罪判決トルコ 無神論者のピアニスト 世界的に活躍するトルコのピアニスト兼作曲家ファジル・サイ氏(43)がイスラム教を侮辱したとして、イスタンブールの裁判所 […]
『ピアノと日本人』斎藤信哉
ピアノを教えることは、私の大切な仕事のひとつだ。そんな時に折に触れて使う表現がある。曰く「そんなふうにピアノの調律師みたいな弾き方で音を出してはいけません」。感性の良い学生はこの言葉だけで納得し、音の響きが即座に変わるこ […]
『ウィーン・フィルとともに』ワルター・バリリ著 岡本和子訳
「古き良き時代」という言葉がある。自分の人生をふり返ったときに多くの人が感じる、「あのころは良かった」「あの時は幸せだった」という郷愁に似た思い出だ。辛かったこと、不自由だったこともたくさんあったはずだし、おそらく幸せよ […]
『知って得するエディション講座』吉成順
興味深い内容には違いないが、どういう人にお薦めしたものか、迷うところだ。とりあえずはピアノを弾ける人、それもある程度のレベルに到達した人にとって有意義な参考書となるだろう。しかし音楽学生やピアニスト向きに書かれてはいるも […]
『ドビュッシーと歩くパリ』中井正子
昨年のコンサートステージでは積極的にクロード・ドビュッシーの作品がとりあげられていた。パリを愛し、フランス印象派を象徴する魅力的な作品を数多く創作したドビュッシーの生誕150周年を意識してのことである。ドビュッシーが創作 […]
『僕らが育った時代1967-1973』武蔵73会
手前味噌ながら紹介させていただきたい本がある──というのは、本書には私自身が担当した部分(“武蔵の時代──親子関係のひずみ”)も含まれているからだ。いや、それだけではない。書評空間の評者のひとりである西堂行人(舞台芸術) […]
『ベートーヴェン』平野昭
「作曲家 人と作品シリーズ」の中の一冊だ。9月に刷り上がったばかりだから、ベートーヴェンの伝記として、現時点では世界でもっとも新しいものだろう。ベートーヴェンの生涯を追った伝記の部分とともに活気にあふれた言葉でまとめられ […]
『ピアニストになりたい!』岡田暁生
「芸術家である」ということには、単に一芸に秀でているだけでなく、人間としてのバランスがとれていることも含まれるのではないだろうか。「エキセントリックな」という評価が先行するアーティストは別にしても、人生をかけてひとつのこ […]
『どうして弾けなくなるの? 〈音楽家のジストニア〉の正しい知識のために』J. ロセー、S. ファブレガス
演奏家に特有な局所性ジストニアという病気をご存知だろうか。4月の書評『ピアニストの脳を科学する』でも触れた病名だが、この疾患に関するきわめて詳細な書籍が出版された。バルセロナ(スペイン)にある音楽家専門治療施設「テラッサ […]